2024年12月31日火曜日

「ハンナ=アーレント」

 その生涯と全体主義に関する興味から、ハンナ・アーレントの解説書を読んだ。「ハンナ=アーレント」太田哲男著(清水書院)である。生涯(前半生)、「全体主義の起源」、その後の所著作(「イスラエルのアイヒマン」など)からなる。ハンナ・アーレントによる全体主義の成立の流れをまとめる。

国民国家の成立 19世紀のヨーロッパにおけるナショナリズムの台頭と密接に関連する。国内では少数民族の排除または同化政策を行う、ヨーロッパにおけるユダヤ人排斥はこの流れに沿うもの。

帝国主義の発展 特定の国家が他の国や地域を支配し、その資源や市場を自国の利益のために利用する政治形態。19世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの大国(英仏蘭等)がこれにあたる。

全体主義主義の成立 全体主義体制は20世紀にナチス・ドイツのヒトラー政権やソ連のスターリン政権などでドイツは海外の植民地化に遅れたためこの方向に進む。政府が社会全体を完全に支配し、個人の自由や権利を制限する政治体制。強力な中央集権、プロパガンダと情報統制、秘密警察と監視、個人の権利の抑圧、一党独裁などの特徴がある。

この本はないが日本の全体主義を調べると、構成要素をバラバラにするのが全体主義の特徴だがこれは弱いが、日本の文化には個人よりも集団の利益を優先する考え方がありこれは親和性がありヒトラー政権やソ連のスターリン政権との違いがあるようだ。




2024年12月27日金曜日

「太平洋戦争の歴史」

  「太平洋戦争の歴史」黒羽清隆著(講談社学術文庫)を読む。太平洋戦争の学者による通史を読むのは初めて、本来はこの著者による別の本を読もうとしたのだがこの本で良かった。個々の出来事については知っていることも多かったが戦争を連続として全体を俯瞰することができる。アメリカとの開戦時のアメリカ側の考え、4年の戦争のうち勝っていたのはアメリカが本気を出していない半年であったこと、大東亜共栄圏の実態、学童疎開と敗戦後の子供たちの変化、玉砕と集団自決に追い込まれる日本人の姿など再認識させられることが多々あった。


2024年12月17日火曜日

上野公園

  時間を作って都心の公園を歩いているが、今回は上野公園の散策した。ここは徳川家の菩提寺のひとつである寛永寺の敷地だったが、大政奉還のさいこれに反対する彰義隊と薩長連合軍との戦争で焼き払われ、そのあと公園として生まれ変わった場所です。上野駅から初めに西郷隆盛像まで歩く、続いて彰義隊の慰霊碑、清水観音堂、顔のみ残る大仏を見る。次に見学したのは上野東照宮で、左甚五郎の龍の彫り物などあり、見栄えがした。またすぐそばに五重の塔がある。精養軒で昼食をとった後、博物館敷地にある移築された大名屋敷の唐門を見学し、さらに寛永寺に到着。本堂は川越の喜多院からの移築だそうである。本堂の左右にある竹の飾りや将軍の墓の前の唐門をみて、鶯谷駅に至る。


2024年12月11日水曜日

太陽の自転

  職場に新しい赤道儀VIXEN AP-WLマウントが入ったので、テストで太陽面を撮った。3日連続で撮ったので太陽の自転運動がわかるので1枚にまとめた。

 太陽の自転周期は黒点を観察することによって求められる。その値は赤道付近では約25日、極地方では約30日である。緯度によって自転周期が異なるこの運動は「差動回転」と呼ばれる。この差動回転により赤道付近の磁力線が引き伸ばされ、太陽に巻き付く。その一部が表面に浮かび上がって黒点が形成されると考えられている。




2024年12月8日日曜日

Lunar phases

 太陽系天体の様々な動きを写真でまとめていたのですが、一番身近な月の満ち欠けをまとめていなかったのでここ数年撮った写真からそれを作った。

基礎データ

地球と月の距離 平均は38万4400キロメートルであるが、月の軌道の近点では36万3304キロメートル、遠点では40万5495キロメートルで、離心率は0.055である。

月が地球を公転する周期 恒星月は約27.3日である。朔望月は約29.5日である。



2024年10月21日月曜日

紫金山・アトラス彗星

 10月の13、14、20日と夕方の空に尾を引く紫金山・アトラス彗星C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)を見た。2024年9月27日に太陽から約 0.39 au離れた近日点を通過し、その前後の時期は地球上からも肉眼で観測可能になると予測され、実際に9月(明け方)から10月(夕方)にかけて肉眼でも観測できるほどの明るさとなった。約8万年ごとに観測される彗星であるとされ、オールトの雲から来た長周期彗星ということになる。




2024年8月11日日曜日

「日本の軍隊-兵士たちの近代史-」

  日本の軍隊-兵士たちの近代史-吉田裕著(岩波新書)を読む。自身、断片的にしか知らなかった日本軍のことを歴史学者がまとめた本。明治の初めに徴兵令が制定され日本軍が成立した。軍隊生活の影響で明治期に社会が変化したこと、具体的には時計(明治の初め日本人は時間を守る感覚なし)、洋食(脚気の予防など)、洋服、ザンギリ頭、靴、行進の仕方(×ナンバ歩き)など。このころから15年戦争まで日本の特に農家は貧しく軍隊に行くことがある意味喜ばれた。軍隊に行くことによって退役後も恩給や村での立場の向上があった。大正デモクラシー期における軍隊の民主化と昭和期にはいりこの動きの反動(国軍が皇軍となるなど、また上官の命令への絶対服従)。軍隊のなかでの高学歴者とそうでないものの存在(高学歴者の中の反軍思想)。尋常小学校卒が主体の軍隊、戦前はここも卒業していない未就学の入隊者もいた。日清、日露までは軍隊同士の戦いだったが第一次世界大戦では総力戦に変わる。日本軍もこれを研究したはずだが全く生かし切れていない。15年戦争での精神偏重主義、次第に政治介入する日本軍。飯盒で各人の飯を炊く日本軍、外国は食事を作る部隊がある(食料の略奪につながる)。個人のものをすべて自身で運ぶ、現地人の徴用。徴用数が増え若くない徴用軍人が増えるにしたがって統率(治安)が取れなくなる、上官への不満を出させないため現地の人への略奪、強姦等が容認されてきたとのことである。日本の近代化に貢献した部分がある反面、西洋の軍隊に比し科学的でない精神至上主義的集団がなぜできたのか考えさせられる。日本は戦前においても1等国では決してなかった。




2024年8月5日月曜日

「微化石データ活用の最前線」

  島根大の林広樹氏による「微化石データ活用の最前線」を視聴する。地質学会の有料講演会だが予定が合わずビデオ視聴をする。有孔虫とはなにかから始まり、それを調べて何がわかるか、研究の最前線に触れる講義。

 石灰質の殻を持つ小型の単細胞生物、底生と浮遊性の2大別される。示相化石また示準化石として利用される。底生はカンブリア紀から、浮遊性はジュラ紀から生息する。示準化石として分解能が高い、それを利用しKP境界での絶滅進化の様子が詳細に調べられている。現生種の水平分布、鉛直分布や化石種についても調べられている(酸素同位体比)。微化石研究の中で中心に位置する。地理的に同時に発生また絶滅するかの研究がされる。複数の微化石、放射性年代、天文年代を組み合わせ年代表が作成されている。海洋底での堆積物、石灰質、珪質、陸源などの分布、また石灰質は水温が低いと補償深度が浅くなり堆積しない。珪酸は河川水、湧昇流によって供給される。炭酸塩は珪酸塩に比べて自由度がないので放散虫に比べて殻の多様性がない。有孔虫群集から水温を推定する研究がなされている。またチバニアンの認定における微化石研究の役割が大きかった。

 有孔虫学概論といったところで自身にとっては放散虫について勉強していたことと同じことが有孔虫で行われていること、その詳細がまとめられ非常に参考になった。

2024年7月28日日曜日

「アドルフに告ぐ」

  「アドルフに告ぐ」手塚治虫著を読む。戦前〜敗戦の歴史を背景にした4人の群像劇。4人とはヒットラー、日独の親を持つA、在日ユダヤ人のB、そして狂言回しの新聞記者Cである。彼らや周りの人々が歴史のうねりの中で翻弄される姿を描く。AとBとは子供の頃親友であったが、Aはドイツに行きナチス党員になり出世していく、Bは日本のユダヤ人社会の中で生活基盤を作っていく。命を受け日本に戻ったAはBと衝突、最終的には殺し合うことになる。ヒトラーについてもきちんとした資料を下に描かれている。

 手塚作品1番とも評価されるので手に取る。漫画なので複雑な展開でも理解しやすい反面、人物の心理描写の部分で文章のほうが優れていると感じた。


2024年7月21日日曜日

「微化石一般と放散虫」

  日本地質学会主催の「微化石一般と放散虫」松岡篤氏の講演を聞く。新生代と中生代の放散虫研究例を初学者向けに講義するものである。新生代は佐渡の第四紀層の放散虫、有孔虫などの微化石の抽出、資料化の方法を具体的にまとめた。中生代はジュラ・白亜紀境界(JKB)のGSSP策定の件について対象となるイタリアの地層の調査方法を話した(生物群集の変化に乏しいためゴールデンスパイクが設定されていない)。また日本の海溝斜面堆積物から採集されたジュラ紀の放散虫から作った放散虫トランプの話題提供がなされた。具体的な話で理解しやすかった。また、所々で語られる放散虫やその他の微化石に関する知識、具体的には示準化石としてはコノドントは三畳紀まで、ジュラ紀は放散虫のみ、白亜紀半ば古第三紀からは浮遊性有孔虫や珪藻(これも年代決定には小さなものが指標になる)が有効、などのものは役に立った。

2024年7月15日月曜日

繊維と染料の進歩

繊維の種類

天然繊維

 植物繊維 綿/麻・・・亜麻(リネン)、大麻(ヘンプ)、当麻(ジュート)

 動物繊維 生糸、絹糸/羊毛/カシミア・・・山羊

化学繊維

 合成繊維 ナイロン・・・絹に近い/ポリエステル・・・コットンに似る/アクリル・・・ウールに近い/ポリウレタン・・・ゴムのような性質

 再生繊維 レーヨン・・・木材パルプ

天然染料

 カロチノイド ニンジン、クチナシ(黄~橙)/フラボノイド ヤマモモ(黄~茶)、紅花(赤~紫)/キノン 茜(赤)/ポリフェノール ビンロウジ(茶~黒)/インドール 藍、貝紫(紫~青)/その他 キハダ(黄~茶)、ウコン(黄)、コチニールカイガラムシ(深紅)

合成染料

石炭や石油などを原料として、合成された染料、以前は石炭タールから、現在は、石油(ナフサ)から得られる芳香族炭化水素類(ベンゼン、ナフタレンなど)を原料に、有機合成させることによって作られる。

合成染料の歴史

19世紀の中頃、ドイツの科学者ホフマンが、コールタールからベンゼンを分離し、そのベンゼンから染料製造の原料となる「アニリン」を製造。

1856年、W・H・パーキンが、そのアニリンから紫色の塩基性染料を作り、1857年に、世界で初めて合成染料の工業化が実現。

1869年に、ドイツの化学者グレーベとリーベルマンの共同開発によってアリザリン(茜の色素)が作られる。

1878年に、ドイツの化学者バイエルがインジゴ(藍色の色素)を作る。


2024年7月4日木曜日

「苦海浄土」

 「苦海浄土」講談社文庫(石牟礼道子著)を読む。社会運動をする著述家の菅野完の原点だとの話を聞き、読んでいなかったので手に取る。

 水俣で起こったことを被害者に寄り添いながらその実態を告発するレポート。豊かな海の貧しい漁民に降り掛かった不条理な災禍、その中で翻弄される人々。隠そうとする企業、一貫した政府の企業よりの態度、それに追従するマスコミ、事実をあきらかにしようとする勇気ある人々。方言が多くやや読みにくい文体だがすごい記録である。
 水俣病について調べていて印象になった人を上げておく。宇井純:水俣病の研究と社会への広報に取り組んだ研究者、東大で干され万年助手の扱いを受ける。ユージン・スミス:世界に水俣病を発信した写真家、取材の際に会社関係者の暴力を受けそれも原因のひとつで亡くなる。


2024年5月21日火曜日

『沖縄「戦後」ゼロ年』

 『沖縄「戦後」ゼロ年』目取真俊著(生活人新書)をよむ。小説「虹の鳥」の評判を聞いて、本作家に興味を覚えて手近にあって未読だった本書を手に取った。彼の小説の背景に当たる思いをまとめたもの。章立ては、沖縄戦と基地問題を考える(はじめに「戦後60年」を考える前提、私にとっての沖縄戦、沖縄戦で小説を書くこと、基地問題)、〈癒やしの島〉幻想とナショナリズム 戦争・占領・基地・文化。沖縄の方が語るので迫力が違う、天皇に対する思い、復帰後の沖縄教育界の問題、ヤマトの沖縄に対する仕打ち、本土のマスコミではここまではっきりと言わない、沖縄の本音が語られている。



2024年4月29日月曜日

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」

 「伝わる・揺さぶる!文章を書く」山田ズーニー著(PHP新書)を読む。youtube を見ていて文章を書く上で必ず読むべき本と紹介され手に取る。

 入試の論文、依頼文、自己推薦文等、相手に伝えたり説得する文章を書く際の注意点を根本からまとめた、いわゆるHOW TO本。考える必要性、文章を作る際の注意点、相手が何を要求しているのか等からいかに相手に伝えるかを解説している。各単元も適当に短い文章で構成されて読みやすい。発展させると話を通して相手を説得するのにも使える。


2024年4月7日日曜日

有孔虫化石

  多摩川の上総層群を調べていて有孔虫化石が入る層準があり、さらに比較的容易に分離できることがわかり、処理をし写真撮影した。具体的には日野の連光寺層と登戸の飯室層である。前者は底生有孔虫のみで後者は浮遊性と底生の有孔虫が含まれている(写真は登戸の飯室層から産出する化石)。前者の堆積環境が内湾で後者が大陸棚斜面なので構成種の違いはそれを反映していると考えられる。なお後者では放散虫化石が出るかと調べたがほんのわずかに出るが研究対象になるものではない。





2024年3月31日日曜日

ポンス・ブルックス彗星

 3月29日の天体観測の際に電視観望でポンス・ブルックス彗星をみた、ここのところ明るくなったとの情報が挙げられており、5等級ほどでふわっと広がるコマと長くのびる尾を確認することができた。

  ポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)は、周期70年の周期彗星でハレー型彗星に分類される。1812年7月21日にジャン=ルイ・ポンによって発見され、1884年1月、1954年5月と回帰し、次の近日点通過は2024年4月20日(21日)で、同年の6月2日から3日には地球に1.546 auまで接近すると予測されている。




「高野聖」

  泉鏡花の「高野聖」を読む。新幹線敦賀延伸の話題の中、天声人語で明治の頃のこの地域の旅を背景にした猟奇譚として「高野聖」の話題があった。寡聞にして知らなかったため青空文庫で読む。当時の旅行の様子はリアルで時代を感じさせる。旅館での旅僧の話がメイン。苦労した山旅の途中人間でない妖艶な女性に誘惑される話で、誘惑に負けると人外の生き物に変えられるのだが、一歩手前で踏みとどまり逃げることができる。文語調でやや読みにくい。嘘だとわかっていても引き込まれる。なにかの比喩かもしれない。

プレートソルヴィング

 3月29日に久々に天体観測を行った際、準備してきたプレートソルヴィングを行った。プレートソルヴィングとはシーモスカメラでPCに取り込んだ画像から、あらかじめ記憶させておいた星の位置データと比較し、望遠鏡がどの方向かを認識させる操作である。またこれを発展させ目的の星を中心に持ってくることもでき、これをアライメントすることで架台を正確に操ることができる。実際の操作を以下にまとめる。

 もともと電視観望のためShapcapを使っていた。次にEZGTi経緯儀をSynScan_usbでPCにつなぎSynScanPro Windowsで制御でき、さらにプラネタリウムソフトのステラリウムを使って目的の方向に鏡筒をむけることができることを確認した。PCに望遠鏡の映像を取り込むソフトとして使っているShapCapに4.1からプレートソルヴィングの機能が追加された。ShapCapの設定で、ハードウェアにSynScan app driverを指定し適用する。次にプレートソルブにSharpSolveを指定し、望遠鏡の制御にマウントを同期し、天体を中央に再配置するを選び適用する。実施にはSynScanProでアライメントの天体を導入した後、ShapCapの望遠鏡制御のボタンからプレートソルブを実行する(このさい接続済みに✓をいれる必要がある)。目的の天体を導入した後、SynScanProでアライメントを確定する。このあとはステラリウムで目的の天体を次々に見て記録することができる。

 補足)ネットの記事ではAll Sky Plate Solverをプラグインとして利用してプレートソルヴィングを行うことが散見されるが、ShapCap4.1からはこの部分が不要になる。またプレートソルヴィングを調べている際にネットで撮った星野写真がどの方向の何なのかを確定する、純粋にプレートソルヴィングのみを行ってくれるサイトを見つけたAstrometry.netである。

 

 


2024年3月4日月曜日

ドブソニアン

 古い高橋製作所の16cm反射が眠っていたので、何とか利用できないかと考えていた。ただ問題は昔の頑丈なつくりなので14.5㎏もありよほど頑丈な台でないと載らないことである。結論は自作のドブソニアンである。

 初めは厚さ1cmの合板でつくったのだが、筒を支える部分が外側にしなってしまい、うまくいかない。そこで重くなるが厚さ2cmの合板で作り替えたところなんとか撓まない台を作ることができた。自転運動の同期が無理なので、月を中心に観望と写真撮影に使ってみる予定である。



2024年2月25日日曜日

安倍公房「壁」

  安倍公房「壁」を読む。指揮者の小澤征爾が先日亡くなったとき、満州出身で共通する基盤を持つ文化人の一人として紹介されていたのに興味を持ち、今まで読んだことがなかったので手に取った。またその紹介では小澤征爾の指揮のことをクラッシックは堅苦しいものでなく楽しくなくてはいけないとの評であった。

 多数ある作品の中で、高校教科書にもとりあげられていた「赤い繭」のある「壁」を選ぶ。「壁」は最初の前衛的代表作で、第25回芥川賞を受賞した。「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」の中編と短編からなる。「S・カルマ氏の犯罪」は名前を失った主人公が裁判にかけられ、そこから逃げたり、最後に壁になる話。話についていくのが大変で、読後に「不思議の国のアリス」を連想する。「バベルの塔の狸」は主人公が狸のような動物に影をとられ、その結果透明人間になり、狸に連れられてバベルの塔に行き、危機的なところを時間彫刻器で時間を戻し影がとられるのを防ぐ話。杜子春狸として中に出てくるが、読後に「杜子春」に似ていると思った。「赤い繭」は短編集で「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」からなる。SFショートというと星新一だが、安倍にくらべると星には不条理またハチャメチャという要素が少ないような気がする。



2024年2月23日金曜日

「フォッサマグナ」

 「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 」ブルーバックス,藤岡 換太郎 (著)を読む。日本の地史の最大の問題であるフォッサマグナについて正面から取り上げた普及書。

 フォッサマグナは北部と南部に分けられる。北部は日本海拡大の際の東日本と西日本が観音開きの様に移動した際、中央部に巨大な地溝が生じたのが元になる。この際糸魚川静岡構造線は正断層であった。火成活動を伴う6000m強の堆積物ができる。この運動によって日本列島の逆「く」の字配置ができる。またこの後太平洋プレートによる圧縮場となり、糸静線は北米プレートとユーラシアプレートの境界で逆断層になる。日本海の拡大は四国海盆拡大にも関係したプルームから枝分かれしたものが原因の可能性があり、拡大終了後圧縮場の下で日本海盆の東日本への沈み込みが始まった。

 南部は観音開きの先端にあたるが、ここではトランスフーム断層であったフィリピン海プレートの境界が沈み込み境界に変わり、その東端の太平洋プレートの境界にあった島弧が次々に衝突をはじめる。御坂山塊、丹沢山塊、そして現在伊豆地塊が衝突および付加をした。これに伴いプレート境界は次ぎ次に南にジャンプし、またその衝突に伴って境界では厚い堆積物ができた。またこの一連の衝突によって基盤の中古生界の八の字構造が成立した。


2024年2月6日火曜日

「日本近代化と民衆思想」

  「日本近代化と民衆思想」 (平凡社ライブラリー) 安丸 良夫著を読む。日本人の意識構造の変化として、江戸時代に商品経済が発達する以前の庶民は因果応報的な、前世での行いが今の生活を規定するとの世界観を持っていた。商品経済が発達するとそれでは説明できない没落をする人々が現れ、そうならない生活をする生活指針として勤勉、倹約、謙譲、孝行などが貴ばれるようになった、これは儒教と功利主義を基礎とするものである。そしてこれが明治時代の日本の近代化を成功させる思想的背景になったとされる。徳目は西洋キリスト教社会と似ているがこちらは神との個人的な関係を基礎とするものである。日本社会を理解するのに良書との指摘がユーチューブであり手にとった。

 本書は江戸時代から明治にかけての、庶民の価値観、世界観を分析したものである。素材としては新興宗教(富士講、丸山教など)、一揆や打ちこわしなどを通じて封建制度の中でいかに生活の矛盾を彼らが解決しようとしたかの精神性や行動が調べられ、その唯心論や封建制度を前提とする戦いの限界が語られる。民衆が行動を起こす際には新たな世界観や哲学が必要であることが感じられた。この手の分野は初めてなのでやや理解が追い付かなかった。またこのような分野が研究対象になっていたのを再認識した。


2024年1月18日木曜日

PCによる望遠鏡制御

 SynScan_usbを購入したので、PCによる望遠鏡制御に挑戦する。

 SynScan_Proとの連携。SynScan_usbでAZGTiXとPCを接続する。SynScan_Pro側は「接続の設定」でシリアルを選び、シリアルポートを選ぶ(com3など)。スマホと違って経度・緯度を入力する。これで使えるようになりホームポジションからアライメントをする。もちろん微調整はSynScan_Proで行う。

 ステラリウムとの連携。「設定画面>プラグイン>望遠鏡のガイド」を選ぶ、起動時に実行にチェックを入れる。再起動するし「新しい望遠鏡の追加」「AZGTiX」等の名前を入れる。「外部ソフトまたはリモート」を選ぶ。メニュー画面に望遠鏡操作の項目がある。このときステラリウム画面上にAZGTiXの方向が図示されている。目的の天体を画面上で選び画面の中央に持っていく。画面の中央の赤経赤緯を自動で写しそこに望遠鏡を向けさせる。これで目的の星がは入っていることになる。

 導入ソフト:Stellarium,SynScan Pro,ASCOM Driver for SynScan App,ASCOM Platform

2024年1月11日木曜日

「坑夫」

「坑夫」夏目漱石著(青空文庫)を読む。漱石はそれなりに読んでいるが、あるユーチューバーが漱石で一番面白い作品との評価を述べていたの読んでみる。あらすじは、恋愛でトラブルを抱えた青年が家出、人買いに騙され坑夫になろうとする話、見習いとして坑内を巡る描写が迫力がある。漱石としては珍しくルポルタージュ風の作品。最後は気管支炎がわかり、坑夫にならずに鉱山を離れる。当時の社会構造が垣間見える。小説にしてくれと持ち込まれた話をもとに生まれた作品。舞台は足尾銅山である。

2024年1月8日月曜日

能登半島地震

 1月1日(日)16時10分頃に起こった能登地震の概要をまとめる。能登半島の北部海岸沿いでWSW-ENEの約150kmの断層が動いたとされ、深さ16kmマグニチュードは7.6、最大震度7であった。断層はNW-SEの圧縮によって起こされた逆断層で能登半島北部(南側の岩盤)は上昇し右ずれ断層であった(南側の岩盤は西にずれた)。震源域が海域を含む浅い地震だったため津波が発生し最大数mであったと予想されている。この断層は既知のものではあるが内陸のため周期は1000年だと考えられていた。人的被害は石川県で8日(月)段階で死者が168人、安否不明が323人である。

 能登沖では2年半にわたって群発地震が発生している。その中で最大の地震は2023年5月5日のM6.5の地震で最大深度6強であった。この地震の原因はプレートの沈み込みに伴い堆積物中の大量の水が絞り出され、その上昇が原因で起こるとされる。一般的には群発地震帯では数多くの地震のため応力解放され大きな破壊は起こらないとされるが今回はそうではなかった。群発地震を起こした水が地域にたまっていたひずみを解消させる断層運動の引き金になった可能性が指摘されている。

2024年1月5日金曜日

「炭素はすごい」

 「炭素はすごい」齋藤勝裕著(サイエンス・アイ新書)を読む。

専門家が炭素にまつわる話題を総花的にまとめた本。高校教科書の1つ先をまとめたもので、理系大学生の教養書。薬、毒、新素材、火薬、先端分野のなどが語られそれぞれ新しい知見があった。