2016年10月9日日曜日

ノーベル医学生理学賞

 大隅良典さんがノーベル医学生理学賞を受賞した。対象は細胞の基本的な働きの一つオートファジー(自食作用)の再発見にかかわる業績である。
 オートファジーは1963年、ベルギーのド・デューブが命名した。語源は「自分を食べる」というギリシャ語だ。この分解現象は、彼が74年のノーベル医学生理学賞を受けた細胞内小器官「リソソーム」研究の過程で見つかった。多細胞生物では、酵母の液胞の役割を、リソソームが担っている。
 命名から40年近くたって研究が盛んになったのは、大隅さんによる「再発見」のおかげだ。ゲノムが解読されていたモデル生物の酵母を使い、オートファジーに不可欠な遺伝子を特定することで、分子生物学的な研究の基盤が整った。
 やがてマウスやヒトのゲノム解読も進み、酵母と共通の遺伝子を大規模に探すことが可能となった。オートファジーに関する論文の数は、大隅さんの93年の成果以降もすくなかったが、動物に共通の現象であることが裏付けられると爆発的に増えた。今では、がんや老化に伴うヒトの病気にオートファジーがかかわっていると考えられるようになり、現在盛んに研究されている。

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