2020年5月31日日曜日

地球科学部活動報告

 コロナ禍で3月初めから、学校や部活が中止になっている。学校はようやく6月1日に活動再開だが部活動は少し先になりそうである。部活に関しては休み中はほとんど何もできなかったが、唯一の活動が部誌作りで5月後半に完成させ生徒に配布した。
 もちろん生徒は登校できないので、原稿は部長がメール(?ライン)で集め、顧問が編集、印刷そして製本した。例年通りの部誌が何とか完成した。
(部誌の項目)活動について、年間行事、天体観測、地質見学、夏合宿、地球科学部科学講座、文化祭、科学展、新年会、部員紹介、春から夏の所沢北の星空、秋から冬の所沢北の星空

2020年5月27日水曜日

ハインリッヒイベント

 最終氷期に北大西洋へ多数の氷山が流れ出したことで生じた、急激で大規模な寒冷イベント。海底コアの研究から明らかになった現象で、氷河が大崩壊しそのかけらが海洋に広域に流れ出て、塩分濃度の低い水が広くおおうことになる。このため大気や海洋の循環がかわり、一時的に急激な世界的寒冷をもたらす。このハインリッヒイベントは1回ではなく、少なくとも6回以上繰り返され、その周期は約8,000年から約1万年とされる。
 現在の海洋深層水のベルトコンベアー循環は、北大西洋で冷やされた塩分濃度の高い海水の沈み込みが起こっているが、最終氷期にはその沈み込みはなく北太平洋での沈み込みが起こっていたと考えられている。また、このとき北大西洋から欧州西部へと流れ込む温暖な海流が一時的に停止し、この地域が寒冷化したとされる。
 ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人は約4万年前に絶滅した。この要因としてハインリッヒイベントによる寒冷化が考えられている。

2020年5月26日火曜日

水星

 5月24日に月齢1.5の月、金星そして水星が夕方の西の空で三角形をつくるのを観望した。水星を見たのは久しぶりである。上にわずかに見えるのが水星である。
 太陽に一番近い惑星で、太陽からの距離は0.39天文単位、公転周期が88日で、太陽との最大離角が28度である。半径は地球の38%(ちなみに月は27%)の大きさの地球型の惑星である。英語名はMercuryでローマ神話の伝令の神、ギリシア神話のヘルメスにあたる。水銀の英語名でもある。


2020年5月15日金曜日

下末吉海進

 約12万5000年前に間氷期(リス-ヴィルム間氷期、エーミアン間氷期)があり完新世の平均気温より1度から2度暖かかったとされる。この地球の温暖化によって起きた大規模な海進を下末吉海進という。この海進で関東地方では縄文海進より海域が拡大した。また、現在の海水面から5~10メートル程度高かったのではと推定されている。
 下末吉海進のときにたまった地層は、下末吉層または下末吉層相当層といわれる。またその後寒冷化による海退が起こり平坦な地形面を作ったのだが平坦面およびこれに連続する河川による陸上堆積の地形面を下末吉面という。埼玉では所沢台、金子台が陸上で形成された下末吉面である。
 またこの時期は現生人類の出アフリカの時期で、エーミアン間氷期にアフリカから出たグループはその後絶滅し、8.5万~6.5万年前の寒冷化した時期に出た人々が世界に拡散していくことになる。

2020年5月14日木曜日

縄文海進

 最終氷期から温暖化によって大陸氷床が解け海水面が全世界的に約120m上昇した。日本ではその上昇は約7000年前ころにピークに達し、現在に比べて海面が2~3メートル高くなり、 日本列島の各地で海水が陸地奥深くへ浸入した。これを縄文海進と呼んでいて、その頃は現在より2度ほど気温は高かったと考えられている。
 その後現在の海水面に下がったのだが、単純な氷河性海水準変動の考えからすると、若干寒くなり大陸氷河が少し拡大し、海水量が少なくなったたことになるがその事実はない。また氷河に近かった地域では縄文海進は認められない。これは、氷床融解による海水量が増大したことによって、 その海水の重みで海洋底が遅れてゆっくりと沈降した結果、海洋底のマントルが陸側に移動し、陸域が隆起することによって、 見かけ上、海面が下がって見えることによります。 これが約7000年前の「縄文海進」の背景にある地球規模の出来事です。
 また太陽の日射量のピークは約9000年であるが、約7000年に気温のピークが来たのは、氷床による太陽光の反射の効果がなくなり約7000年に高温のピークがきたと考えられます。

2020年5月12日火曜日

ミランコビッチ・サイクル

 地球物理学者ミルティン・ミランコビッチによって唱えられた太陽の日射量が気候の変動を説明するという学説。太陽の日射量は地球の公転軌道の離心率の変化、自転軸の傾きの変化、自転軸の歳差運動により変動すると考える。
 離心率の周期的変化は約10万年をかけて歪な楕円と円に近い楕円を繰り返す。氷期サイクルの周期は約10万年であり、離心率の変動周期と一致している。自転軸の傾きの周期的変化は約21.5度から24.5度の間の間を定期的に変化しており、その周期は4.1万年である。地球の自転軸の向きは、公転しながら周期的に変化しており、これを歳差と呼ぶが、この周期は1.8万から2.3万年(複数の周期がある)である。
 以上の周期をもとに太陽放射を計算して求めた曲線がミランコビッチ曲線であり、これと,深海底のボーリングコア中の化石有孔虫の酸素同位対比を用いた古水温の寒暖サイクルとほぼ一致する。

2020年5月11日月曜日

酸素の同位体比

 酸素の同位体比と存在量は以下のものである。
  16O(99.759%)、17O(0.037)、18O(0.204)
17Oは少ないのでここでは無視すると、海水(H2O)には重い水(18Oを含む)と軽い水(16O)があることになる。海水が蒸発するとき16Oが優先的に水蒸気になるので、積雪によって氷床に取り込まれ易いのは重い水よりも軽い水である。そのため、氷床が拡大する氷期の海水は相対的に重い水が多くなり、逆に氷床が縮小する間氷期の海水は軽い水が多くなります。海水中を漂う石灰質有孔虫は海水を使って石灰質の殻を作りますが、この殻には水温が低いほど、重い海水が多いほど多くの18O が取り込まれるので、酸素同位体比18O/16O は氷期に大きく間氷期に小さくなります。これを調べることにより過去の気温の変化を知ることができます。
 また水蒸気からは18Oが優先的に雨になるので、極地の温度が低いと水蒸気がそこにいくまでたくさん失われるので同位体比は小さくり、高いと水蒸気が雨として失われにくいので同位体比は大きくなる。このことから氷床のコアを使って過去の気温を調べることができる。

2020年5月10日日曜日

人類の誕生とC4植物

 人類が誕生したころ、700万~800万年、C4植物が地球各所に広がる。これはかなりの面積で森林が草原になったためと考えられている。
C3植物
 光合成:カルビン・ベンソン回路
 高温や乾燥などの気孔が閉じがちになる条件下ではCO2を集めにくい
C4植物
 光合成:カルビン・ベンソン回路+CO2濃縮のためのC4経路
 維管束鞘細胞にも発達した葉緑体が存在
 高温や乾燥などのさい気孔を開け、CO2を固定しておくことが可能
 高温や乾燥、低CO2、貧窒素土壌と言った、植物には苛酷な気候下に対応
 トウモロコシや雑穀類
 13Cの吸収量がC3植物より多い
 白亜紀に初めて出現

「気候文明史」

 知り合いから専門の参考になると勧められ、田家康著「気候文明史」を読む。
 現生人類の出現の頃から、特に最終氷期以降の詳細な気候変動とそれがいかに人類に影響を与えてきたかをまとめる。その情報量の多さと詳細さに驚く。
 最初にパナマ地峡の完成、インド洋と太平洋の分離それに伴う現在の海流の完成からはじまる。
 気候変動を太陽の日射量の変化(ミランコビッチサイクル)、火山噴火、海流の変化、大気循環の変化、モンスーンの変化などから総合的に解釈を与えている。
 人類史がその内部での要因だけでなく気候の変動によってつくられてきたか。具体的には、出アフリカ、各大陸への拡大、農耕・牧畜の成立、都市の成立、国家の繁栄と衰退、ローマの盛衰、温暖から寒冷に変化した中世、近世気温変動と社会などがまとめられている。
 また人類に大きく影響をあたえた寒冷化についても大気循環の関係などで低緯度と中緯度とではその変化が異なることなどが触れられている。
 最後に現代の温暖化の問題が語られている。
 大雑把には知っていることではあるが知識を大いに広げてくれた。

2020年5月7日木曜日

南関東の中期中新世以降の地史

プレート論による南関東の中期中新世以降の地史

1700万~1500万
 日本列島の分離、日本海の形成
1500万
 フィリピン海の運動方向の変化(WNW→N)
800万~600万
 丹沢ブロックの接近、本州との間にトラフ(舟上海盆)の形成
500万
 丹沢ブロック衝突、前弧海盆(嶺岡帯が外縁)が大量の砕屑物、葉山G・三浦Gの付加
300万
 フィリピン海プレートの運動方向変化(N→NW)
250万
 伊豆ブロックの衝突、豊岡Gの褶曲と黒滝不整合の形成、九十九里トラフの形成と埋積(上総G)
50万
 相模トラフでの沈み込み&堆積物の形成、長沼不整合の形成、下総Gの堆積、スラブの開裂→東京湾の形成
*絶対年代は資料によって若干ことなる。