2016年2月27日土曜日

「図解 気象学入門」

 「図解 気象学入門 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図」古川武彦、大木勇人著(ブルーバックスB-1721)を読む。幅広い気象学の分野を的確にまとめた、理系大学生向けの簡単な教科書のような本。自身の教える大気の科学のup to dateにと読んだが期待通りであった。知っていることの原理を確認できる部分が多かった。具体的に上げると以下の項目である。
 暖かい雨と冷たい雨(ウェーゲナーが提唱)。積乱雲の科学、ガストフロント、スコールライン、テーパリングクラウド、スーパーセル。大気の大循環、偏西風帯は上空でも西風。低気圧モデル、乾燥コンベアベルト、温暖コンベアベルト、偏西風波動。高気圧ができる仕組み、シベリア高気圧、移動性高気圧、小笠原高気圧、チベット高気圧。梅雨、中国と日本の違い。新しい台風の科学。

2016年2月22日月曜日

「スーパーアース 地球外生命はいるのか」

 「スーパーアース 地球外生命はいるのか」井田茂著(PHPサイエンス・ワールド新書041)を読む。 最近の太陽系外の惑星系科学の成果をまとめた本。次のような項目からなる。
 太陽系外の惑星探査の方法、ドップラー法、トランジット法、重力レンズ法。様々な惑星の発見、ホットジュピター、エキセントリックジュピター、スーパーアース。太陽系形成の標準モデル。様々な惑星系はいかに誕生したか。スーパーアースと生命存在の可能性。
 ホットジュピターはもちろん知っていたが、こんなに解っているのかと最新の成果に驚いている。

2016年2月20日土曜日

「人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」」

 「人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」」三井誠著(講談社現代新書1805)を読む。新聞社の科学部の記者がまとめた人類史に関する総括的な本。非研究者がまとめたもので素人向けに解りやすくまとめられている。また決して質は低くない。
 印象に残った部分を上げておく。崩れるイーストサイドストーリー、最も初期の人類の産出場所や乾燥化はしていない当時の環境。原人の段階でヒトは石器、食生活、脳と体型の大型化と飛躍的に進化する。北京原人と火、シャニダールの花粉の問題点。現生人類の誕生と生活域の拡大。ジャワ原人の末路。東アジアに広がる縄文人の起源。化石の年代決定法、遺伝子研究とヒトの進化、脳の巨大化、言語の成立、長寿、視覚の発展等々。
 これを利用し自身の授業プリントにも手を加える。

2016年2月19日金曜日

台湾南部地震

 2月6日、台湾南部でM6.4、最大震度6の地震があり、台南市でビルが倒壊し100人強の死者が出た。死者の9割以上が1つのビルの倒壊による犠牲者でビルの構造上の問題があった可能性がある。
 この地域はフィリピン海プレートがユーラシアプレートに乗り上げるように衝突していて、この衝突に伴う断層のひとつが西にずり上がったようである。また低地での揺れが大きかったのは焦点効果の可能性が指摘されている。

2016年2月17日水曜日

「地球の中心で何が起こっているのか 地殻変動のダイナミズムと謎」

 「地球の中心で何が起こっているのか 地殻変動のダイナミズムと謎」巽好幸著(幻冬舎新書)を読む。岩石学者がプレートテクトニクスについて最近の知見をまとめたもので、非常に参考になった。具体的には以下の項目である。瀬戸内火山帯の形成の仕組み、沈み込む温かいプレートがとける。沈み込みとマントルの発生の仕組み、水の関与。フィリピン海プレートの歴史。伊豆小笠原島弧における大陸地殻の存在とその理由、島弧地殻の部分溶融による安山岩地殻の形成。マントル内でのコールドプルームとホットプルームの仕組み、教科書の図の元になっているのもが何なのか。
 自身も授業でプレートテクトニクスを教えているが、発展の早い分野なので新しい知識をいれて行かないと陳腐化してしまう。 

2016年2月14日日曜日

「宇宙と生命の起源 ビックバンから人類の誕生まで」

 「宇宙と生命の起源 ビックバンから人類の誕生まで」嶺重慎、小久保英一郎編著(岩波ジュニア新書477)を読む。表題のとおり専門家が11の話題について高校生~大学生向けにまとめたもの。それぞれの分野で現在常識になりつつあることが理解できる高校の理科の教科書を1歩踏み出した内容である。前半の宇宙のはじまりから太陽系の誕生までが特に参考になり、太陽系の部分はこれを参考に自身の授業プリントを書き換えた。また最後半の人類までの道のりは参考になった部分はあるが間違いがある(初期の生命について、日本人の成立)。

2016年2月10日水曜日

「宇宙物理への道 宇宙線・ブラックホール・ビックバン」

 「宇宙物理への道 宇宙線・ブラックホール・ビックバン」佐藤文隆著(岩波ジュニア新書394)を読む。著名な宇宙物理学者がいかに専門と取り組んできたか、またその間の宇宙物理学の発展の様子をまとめたもの。
 専門の項目としては次のようなものが取り上げられる。クウェーサーと重力崩壊、一般相対性理論、宇宙背景放射と宇宙膨張、ブラックホール、暗黒物質、大統一理論などである。本書の主目的でないのだろうが、それぞれの事象に対する掘り下げはややおおざっぱで、これだけを読んだのではややわかりにくい部分も多い。
 次に、この本は科学者の一人としての歩みに重点を置いている。それらは具体的に、自身の生い立ち、学生時代の話し、学生時代にいかに研究者としての力をつけたか(彼の場合自主ゼミの役割が大きかった)、研究テーマを以下に設定したか、他の研究者との交流がいかに役に立ったか、科学と政治の問題、研究者としての心構えなどである。

2016年2月9日火曜日

「日本恐竜探検隊」

 「日本恐竜探検隊」真鍋真、小林快次編著(岩波ジュニア新書485)を読む。最近の恐竜学について、日本の恐竜研究についてまとめた恐竜についての入門書。分類学の基本(単系統群、側系統群、恐竜とは三畳紀後期のはじめに主竜類の系統から進化し、白亜紀後期の終りの大量絶滅によって多くは絶滅したが、鳥となった恐竜は現在まで生きのびている)、恐竜の基本的な知識、例えば分類、
鳥盤類
 角竜類(トリケラトプス)
 堅頭竜類
 鳥脚類(イグアノドン)
 鎧竜類(アンキロサウルス)
 剣竜類(ステゴサウルス)
竜盤類
 古竜脚類
 竜脚類(ブラキオサウルス)
 獣脚類(ティラノサウルス)→鳥類
恐竜研究の大変さ、日本の恐竜研究の現状がわかりやすくまとめられている。また、実際の研究者がまとめた本なので迫力がある。

2016年2月7日日曜日

「アフリカ大陸から地球がわかる」

 「アフリカ大陸から地球がわかる」諏訪兼位著(岩波ジュニア新書431)を読む。長年にわたってアフリカを研究のフィールドにする地質学者のアフリカの地質やアフリカに関する話題提供を通じ、その面白さをまとめた本である。
 内容は、初期のアフリカ調査についてやナイル川が探検された歴史から始まり、3つも大きなクラトンからなるアフリカの地質についての話題(始生界、原生界、ブッシュフェルト火成岩体、天然の原子炉、汎アフリカ変成帯、鉱産資源)、また項目を割いて大陸の分裂とダイヤモンド(かつての沈み込みによってつくられたものがゴンドワナ大陸の分裂に伴う火成活動で地上にもたらされる)、アフリカ大地溝帯(大地溝帯の詳細、カーボナタイト、人類の起源)、そして最後に砂漠化の問題である。
 地球の古い大地のことは具体的には知らないことが多く大変参考になった。プレートテクトニクスなどを理解した上で読むべき本で高校生には語り口は平易だが、やや難しいのではないか、理系大学生向けな感じがする。

2016年2月5日金曜日

「カラー版 天文学入門 星と銀河とわしたち」


 「カラー版 天文学入門 星と銀河とわしたち」嶺重慎、有本淳一著(岩波ジュニア新書)を読む。膨大な天文学の分野をわかりやすく解説した中高生向けの入門書。簡単な地球史から始まり、太陽系、星の一生、銀河系、銀河の世界、宇宙の歴史とあり、歴史に重点を置いたまとめがされている。また、情報が新しく、図版がきれいで適切であり初心者に適当である。もちろんその分説明不足かなと思われる部分、ある一方の考えしか述べられていない部分もあるがいたしかたないところである。自身が一番参考になったのは、最新の銀河に関する知見であった。

2016年2月4日木曜日

「地球の内部で何が起こっているか?」

 「地球の内部で何が起こっているか?」平朝彦、徐垣、末廣潔、木下肇著(光文社新書214)を読む。 プレートテクトニクスの研究者による概説と筆者たちが取り組んでいる「ちきゅう」プロジェクトのレポート。
 前半のプレート関連は知識の整理に役立った。具体的には次の項目である。プレートテクトニクスの成立過程、日本列島の新知見、海洋調査とプレートテクトニクス、氷期と間氷期の研究成果などである。
 後半は日本の深海掘削船「ちきゅう」のレポート。何を行うか、技術的な困難さ、研究者のコミュニケーション、プロジェクトの運営など詳述されている。はっきりいって後半はやや間延びがする観がある。後半は自分たちの最近の活動内容をまとめた部分であり、一般の読者に地球科学的な関心を持ってもらおうという部分ではない。この本全体の対象者は地球科学系の学部生以上である。

2016年2月3日水曜日

「地磁気の逆転X年」

 「地磁気の逆転X年」綱川秀夫著(岩波ジュニア新書397)を読む。 地磁気について書かれた優秀な教養書。私も地学の授業で地磁気に関して話しているが、そのベースになるような知識が広く優しく正確に書かれてある。
 役にたったところを以下に列挙しておく。地球における双極子磁場と非双極子磁場、地磁気の逆転時にも後者はなくならない。地磁気の逆転は約300年で起こった(房総半島の研究)、オーロラの仕組み、オークランドエクスカーション、地球磁気の3条件、白亜紀スーパークロン、なぜ地球に磁場があって金星・火星・月にないか。
 理系進学のとくに地球科学系に進む学生には読んでほしい本である。