2024年2月25日日曜日

安倍公房「壁」

  安倍公房「壁」を読む。指揮者の小澤征爾が先日亡くなったとき、満州出身で共通する基盤を持つ文化人の一人として紹介されていたのに興味を持ち、今まで読んだことがなかったので手に取った。またその紹介では小澤征爾の指揮のことをクラッシックは堅苦しいものでなく楽しくなくてはいけないとの評であった。

 多数ある作品の中で、高校教科書にもとりあげられていた「赤い繭」のある「壁」を選ぶ。「壁」は最初の前衛的代表作で、第25回芥川賞を受賞した。「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」の中編と短編からなる。「S・カルマ氏の犯罪」は名前を失った主人公が裁判にかけられ、そこから逃げたり、最後に壁になる話。話についていくのが大変で、読後に「不思議の国のアリス」を連想する。「バベルの塔の狸」は主人公が狸のような動物に影をとられ、その結果透明人間になり、狸に連れられてバベルの塔に行き、危機的なところを時間彫刻器で時間を戻し影がとられるのを防ぐ話。杜子春狸として中に出てくるが、読後に「杜子春」に似ていると思った。「赤い繭」は短編集で「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」からなる。SFショートというと星新一だが、安倍にくらべると星には不条理またハチャメチャという要素が少ないような気がする。



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