2024年2月6日火曜日

「日本近代化と民衆思想」

  「日本近代化と民衆思想」 (平凡社ライブラリー) 安丸 良夫著を読む。日本人の意識構造の変化として、江戸時代に商品経済が発達する以前の庶民は因果応報的な、前世での行いが今の生活を規定するとの世界観を持っていた。商品経済が発達するとそれでは説明できない没落をする人々が現れ、そうならない生活をする生活指針として勤勉、倹約、謙譲、孝行などが貴ばれるようになった、これは儒教と功利主義を基礎とするものである。そしてこれが明治時代の日本の近代化を成功させる思想的背景になったとされる。徳目は西洋キリスト教社会と似ているがこちらは神との個人的な関係を基礎とするものである。日本社会を理解するのに良書との指摘がユーチューブであり手にとった。

 本書は江戸時代から明治にかけての、庶民の価値観、世界観を分析したものである。素材としては新興宗教(富士講、丸山教など)、一揆や打ちこわしなどを通じて封建制度の中でいかに生活の矛盾を彼らが解決しようとしたかの精神性や行動が調べられ、その唯心論や封建制度を前提とする戦いの限界が語られる。民衆が行動を起こす際には新たな世界観や哲学が必要であることが感じられた。この手の分野は初めてなのでやや理解が追い付かなかった。またこのような分野が研究対象になっていたのを再認識した。


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